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Quantum Universe

量子情報物理学を中心とした話題で、気が向いたときに更新。ツイッター: https://twitter.com/hottaqu

アインシュタインのタイポ

今回の英国出張で最後の訪問地はノッティンガム大学。セミナーを行うために、友人のヨルマ・ルーコさんとシルケ・ワインファートナーさんの研究室へ。 そのときにヨルマさんが見学させてくれたのが、1930年6月6日に英国のドイツ協会が開催した講演会で…

ニュートン、マクスウェル、ホーキング

いまイギリスに来ている。9日間という短い期間に、ロンドン、ケンブリッジ、ノッティンガムを回る強行軍の出張だ。 最初のロンドンでは、ここの学術査読雑誌のEditorial Boardをしている関係で英国王立協会を訪問。ここはイギリスの科学の長い歴史が詰まっ…

エントロピック重力理論

最近、オランダのエリック・フェアリンデさんが提案したエントロピック重力理論が世間で注目を集めている。これはオランダの観測グループが銀河による弱い重力レンズの効果を使って彼の理論の検証を行い、データと整合したという論文を出したからだ。 フェア…

量子論で、自分の脳を自分で観測するということ。

コペンハーゲン解釈では、測定者と測定対象の量子系を「合理的に」分離できたときに初めて、量子力学は使える形で定式化されていると、これまで説明してきた。 (下記まとめを参照。http://togetter.com/li/758266) 例えば図1は1つの量子的なスピン系を外…

【量子とドクターY】 (出会い編)

その頃、病理医のY氏は、多忙をきわめていた。 いつもの業務に加えて、新しい研究を立ち上げ、それをもとに論文を書くつもりであった。 その日も、実験に協力してくれるアルバイトに集まってもらい、あるテーマに沿ったデータを彼らから収集するはずだった…

量子テレポーテーションでアリスとボブの間のどこを量子情報は飛んでいくのか。

量子テレポーテーションは、一般の方から見てやはり不思議な現象だろう。 この世の中の全てのモノの本性である、量子情報。そしてその集まりとしての量子状態|ψ〉(または波動関数ψ(x))を、ランダムに吐き出された測定結果を遠隔地に伝えるだけで転送するこ…

ペリメータ理論物理学研究所でのウンルーさんの古稀祝い

昨日までカナダのペリメータ理論物理学研究所でウンルーさんの70歳を祝う国際会議があった。 彼の人柄もあって、大変暖かい集まりになった。 初日の最初の講演は、一般相対論の教科書でもお馴染みのワルド(Robert Wald)さん。 タイトルは”Information Lo…

デコヒーレンスは多世界解釈の観測問題を解決しているわけではない。

デイビッド・ドイッチュがあちこちで「量子コンピュータが圧倒的に速いことは多世界解釈が正しい証拠」と宣伝しており、またそれを扇動的に扱う科学記事も人気を集めているため、世間では多世界解釈は完成された量子論解釈と誤解している人がこの10年くら…

タキオン粒子間の重力は引力か、斥力か。

前野さん(@irobutsu)にツイッターでタキオンについていろいろ教えてもらっているうちに、意外なことが分かって面白かった。 タキオンは光速度より速く運動する粒子であり、因果律を破るため存在しないと考えられている。 しかしSF業界では多大なインスピレ…

YQIP2014最終日。

昨日はYQIP2014の最終日。 最初の講演はシュッツホルトさんで、スピンネットワーク系における量子エンタングルメントのモノガミーを平均場近似の誤差評価に使う強力な定理のお話。 また次の講演は遊佐さんの、量子ホール系を用いた量子エネルギーテレポーテ…

YQIP2014、3日目。

3日目の昨日は超弦理論や場の理論における量子情報のセッションと、全体のポスターセッション。 招待講演者のヘドリックさんは場の理論(特にCFT)におけるエンタングルメントエントロピー(Entanglement Entropy)の計算の話。 多分野の研究者のためのイン…

YQIP2014、2日目。

YQIP2014の2日目。午前のセッションの最初の招待講演はレズニックさん。冷却原子にQCDなどの非可換ゲージ理論の計算をさせる量子シミュレータのお話。 非可換ゲージ理論を解析的に解くのはとても難しい大問題。 現在では大型計算機(もちろん量子計算機では…

YQIP2014始まる。

いよいよYQIP2014が始まった。 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yitpqip2014.ws/ 国内外から多数の参加者の皆さんが集まって下さり、感謝。 初日はウンルーさんのトーク(上の写真)からスタート。 今回は参加されている方のバックボーンが様々なため(量…

ブラックホール蒸発過程における量子エンタングルメントの時間発展

ソウルで行なわれた相対論的量子情報の会議RQIN2014(http://physics.korea.ac.kr/RQIN2014/ )で、ドン・ペイジさんとブラックホール防火壁(ファイアーウォール、firewall)仮説について長く議論するチャンスに恵まれた。 彼は防火壁仮説の基礎になっている…

量子テレポーテーションは、本当はテレポーテーションではないのか。

量子テレポーテーション。 最近よく聞くバズワードかと思う。 物理学の世界においてこのテレポーテーションは実験もなされ、応用が試みられる段階だ。 しかし一般の方々の中には、本当に人類が瞬間移動の術を手に入れたと勘違いされている人もいらっしゃるよ…

「量子的」と呼ばれつつ、古典的な本質をもつ現象

「量子的」と思われているいくつかの現象の本質が「古典的」であることは、案外知られていないようだ。 弱測定における増幅効果もそうだし、量子消しゴム(量子消去)をレーザーポインター等の日常の道具を使って確かめようとする実験も、実はそのような例に…

量子エンタングルメントを使って量子系から沢山の情報を取り出す方法

量子エンタングルメントは、量子情報科学における量子テレポーテーションや量子コンピューティング用の「資源」として知られている。 今回は様々な物理学分野における精密測定の「資源」としても使える可能性がある、量子エンタングルメントの側面を紹介して…

物理学における存在とは?

「存在とは何か?」という問題は、本来実に根が深い。 例えば、相対論的量子場の真空状態|0〉を考えよう。 普通の慣性系での量子化では、真空は粒子数が零の状態だ。 またエネルギー密度の期待値もどこでも零だ。 そして図1のように慣性運動している測定機…

量子情報物理学研究会YQIP2014の発表申し込み締め切り1か月前のアナウンス

2014年8月4日から7日に京都大学基礎物理学研究所において量子情報物理学の国際集会を開催する。 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yitpqip2014.ws/ 現在参加登録及び口頭発表、ポスター発表の募集中。国内外の多くの方々に参加を呼び掛けている。 発表…

時間とエネルギーの不確定性関係と、相対性理論

時間とエネルギーの不確定性関係は、世間で誤解されている側面が強い。 測定時間とエネルギーの測定誤差には不確定性関係があると信じられてたり、そのため短い時間ではエネルギー保存則は破れてもいいと考えられたりしている。 これらは以下の記事でも言及…

トンネル領域で粒子を見つけたら、その足らなかったエネルギーはどこから来たのか?

ツイッター(@hottaqu)で、次の問題を出してみた。 例えば1次元空間で図1のようなポテンシャルの中の粒子を考えよう。 基底状態のエネルギーEは、原点付近のポテンシャルVoより小さい。 しかし、エネルギーが足らないため古典的には粒子の侵入を許さない…

測定時間とエネルギーの測定誤差の間に不確定性関係はない。

量子論で有限の時間ではエネルギー保存則が破れるという間違った説明が様々な大学の授業で教えられているようだ。 特に素粒子や場の量子論の講義の中で、重い粒子が媒介して力を伝達するという部分においてこのような説明がなされているらしい。 この誤解は…

量子エンタングルメントと時間の矢

セス・ロイドさんは、量子メカニックを名乗る、猛烈に頭の回転が速いMITの教授である。 量子情報分野では多くの良いお仕事をされており、また「宇宙をプログラムする宇宙」(早川書房)等のポピュラーサイエンスの本の著者としても有名である。 1988年の彼の…

8月に京大基研で行われる若手量子情報夏の学校

8月の量子情報物理学の基研国際研究会YQIP2014 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yitpqip2014.ws/ の直後から同じ会場で開かれる、量子情報の若手夏の学校の案内が公開された。 基研研究会「若手のための量子情報基礎セミナー」 http://www2.yukawa.kyoto…

鉛筆とインフレーション宇宙とスクィーズド状態

とねさんの日記の「鉛筆はどれくらいの時間立っていられるか?」という記事に、量子揺らぎとマクロな揺らぎを繋ぐJJサクライの問題が出ていて興味をひいた。 教科書のほうにはアイスピックを例として書かれていたようだが、NHKの番組では鉛筆が登場した…

波動関数の収縮はパラドクスではない。

コペンハーゲン解釈を学ぶ時、一番最初にひっかかるのは「波動関数の収縮」という概念ではないだろうか。 ある量子系を測定して結果を得た途端、その状態は瞬間に別な状態へと変化するという、あの話だ。 古い教科書で学んだ先生方からは、「そんなことは気…

YQIP2014発表応募締め切り2カ月前のアナウンス

2014年8月4日から7日に京都大学基礎物理学研究所において量子情報物理学の国際集会を開催する。 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yitpqip2014.ws/ 現在参加登録及び口頭発表、ポスター発表の募集中。国内外の多くの方々に参加を呼び掛けている。 8月…

量子生物学(Quantum Biology)

COST2014でプレニオさんが量子生物学の講演をしていた。 https://erez.weizmann.ac.il/pls/kns/kns_pack.showfile?pcode=879 彼は量子情報ではこれまで良いお仕事をされてきたという評価のある人だが、最近は生物分野での量子効果を研究している。 私は量子…

ぼくらが旅に出る理由

と言っても、小沢健二の曲のことではない。 科学者達が世界を股にかけて旅をする理由のことだ。 昨今ではネットでつないだテレビ会議もよく行われているが、それでは得られない大切なものがリアルな国際会議にはある。 テレビ会議やメールでは決まった相手と…

量子力学を学ぶ学生の方に

ぜひ目を通してほしい記事があります。時間依存の摂動論を学ぶとき、不確定性関係の間違った理解をしないようにしましょう。⇒「摂動論と、"時間とエネルギーの不確定性関係"という名の幻。」http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/155744 にほんブ…

このブログの更新情報が得られるツイッターアカウント

このブログと連動をしているツイッターアカウントは下記のものになりました。 https://twitter.com/hottaqu フォローをして頂けると、ブログの更新情報が得られます。

不思議の国のアリスがみた量子猫?

3月にあった研究会QMKEK(http://www-conf.kek.jp/QMKEK/)で弱値の講演をされたホフマンさん、細谷さん、筒井さんへ私がさせて頂いた質問の中に、量子チェシャ猫の話がある。 (註:弱値については http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/152110 …

弱測定(weak measurement)に関する最近の論争

弱値研究で主導的役割を演じてきた、バイドマンさんと話す機会に恵まれた。 彼がアハロノフさんと一緒に提案した「弱測定」の有用性に関して、量子情報理論から疑問視する論文[1]がPhysical Review Lettersに出ており、それに反論[2]をバイドマンさんが書い…

量子論の弱値(weak value)のパイオニア達との邂逅

今日はテルアビブ大学で、相対論的場の理論における量子エネルギーテレポーテーション(QET)のセミナーをさせて頂いた。 呼んでくれた友人のベニが昨夜体調を悪くして今日は欠席というハプニングもあったが、聴衆の皆さんの反応はとても好意的で、QETの詳細…

原始重力波観測で「私たちはホーキング輻射を見ている」と確実に言えるのか。

BICEP2でのBモード観測会見で出た「私たちはホーキング輻射を見ている。」という発言に関しての前回のブログの補足。 インフレーション宇宙を記述するドジッター(de Sitter)時空には宇宙的地平面(cosmological horizon)があるために、宇宙の中を自由運動をす…

インフレーション宇宙でのホーキング輻射(Bモード観測との発表に絡んで)

BICEPという観測グループがインフレーション中に生成された量子的な重力波(重力子、グラビトン)の痕跡を見つけたと発表された。 http://www.caltech.edu/content/first-direct-evidence-inflation-and-primordial-gravitational-waves 従来の宇宙論シ…

量子ベイズ主義(Qビズム)

量子力学の解釈論は、いつも物理研究者間の会話をヒートアップさせるものだ。 多世界解釈派だ、コンシステントヒストリー派だと、騒がしくなる。 自分は極普通の「現代的コペンハーゲン解釈派」だ。 ここで「現代的」と付いているのは意味がある。 量子状態…

ブラックホール防火壁仮説Ⅱ:量子情報理論的なブラックホールの年齢 (ペイジ時間の考え方)

今回はブラックホール防火壁(ファイアーウォール)仮説[1]を理解するために必要な知識を、つれづれなるままに(?)書いてみよう。 なおこの仮説の内容を予告しておくと、前回書いたブラックホール相補性のシナリオの半分を書き変えたものと言える。 相補性…

ブラックホール防火壁仮説I:プロローグ

ブラックホール防火壁仮説について少し書いてみようと思い立った。少しでも他分野の方に量子情報物理学の面白みを感じてもらえたら、という動機から。気が向いたときにのんびりと、いくつかに分けながらアップして行く予定。 まずはプロローグ。 話は197…

摂動論と、"時間とエネルギーの不確定性関係"という名の幻。

20世紀初頭の量子力学黎明期の混乱の中で、間違った形のまま固まってしまい、最近まで伝承されてきてしまったものの1つに、"時間とエネルギーの不確定性関係"の話がある。 発端はソルヴェイ会議におけるアインシュタインとボーアの論争から。 アインシュ…

QMKEKの弱値セッションを踏まえて。

二年に一度行われている高エネルギー加速器研究機構(KEK)で量子論の基礎的テーマを扱う研究会、QMKEK。 http://www-conf.kek.jp/QMKEK/ 今年は3月10日、11日の二日間。 初日は「弱値」のセッションがあった。 私と言えば、長い間に何度も細谷さんから…

3月11日。

3月11日。あれから3年経った今日、研究会で自分の好きな研究の発表ができるという、決して当たり前ではない幸せを噛みしめる。 震災で多くの方々の死に触れ、限られた今後の人生を思いっきり使い切ると思い定めた。 改めて、腹をくくる「今日」である。 …

基研研究会YQIP2014の告知

2014年8月4日から7日に京都大学基礎物理学研究所において量子情報物理学の国際集会を開催する。 http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yitpqip2014.ws/ 現在参加登録及び口頭発表、ポスター発表の募集中。国内外の多くの方々に参加を呼び掛けている。 8月…

あれから、3年。

明日で東日本大震災から3年。 少しずつ解決している問題もあれば、まったく膠着したままの深刻な問題も残っている。 復興状況の個人差、地域差も大きく拡大。 支援が依然として必要な人々には、今後もきちんとした支援を。 そして自立できる環境が整ってき…