Quantum Universe

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YQIP2014、2日目。

YQIP2014の2日目。午前のセッションの最初の招待講演はレズニックさん。f:id:MHotta:20140806035247j:plain冷却原子にQCDなどの非可換ゲージ理論の計算をさせる量子シミュレータのお話。

非可換ゲージ理論を解析的に解くのはとても難しい大問題。

現在では大型計算機(もちろん量子計算機ではなく、並列型の古典計算機)をフルに活用して研究が進められているが、それでもモンテカルロシミュレーションの負符号問題などのため、本当に欲しい精度の計算を行うことは大変な現状。

これを冷やされた原子の集団に短い時間量子的に動いてもらって、計算結果を彼らから教えてもらうことを目的にしているのが今回の内容。

この場合負符号問題は回避できるので、現在よりはるかに速い計算ができる可能性がある。

彼のトークは分野外の研究者にも分かりやすく構成されており、研究のモチベーションから丁寧に話してもらえた。

現時点でのすぐの実装はもちろん難しいけども、今後10年スケールで真剣に実現を試みる価値のある、とても将来性を感じさせる興味深い話だ。

 

午前2つ目の招待講演は、学習院大の田崎さん。

量子力学の第一原理から統計力学を基礎付けしようとする重要なテーマで、アンサンブルを最初から考えるような真似はせずに、典型的な熱平衡純粋状態(thermal pure state)を扱う話。

f:id:MHotta:20140806035334j:plain綿密に練られた構成と繰り返された練習を背景にして聴衆を見事に引き込み、一番多くの関心を呼んだ。

できたてホカホカの定理も紹介されており、とても得した気分。

ブラックホールの情報喪失問題に関してもこのような熱的純粋状態によるアプローチが今後きちんと考えられるべきだと、自分は今思っている。

(田崎さんは招待講演者だったのに大変気を遣って頂いて、世話人メンバーのように研究会場を動き回ってサポートをして下さり、有難くかつ恐縮してしまった。)

 

午後のセッションでは多くの異なるテーマを講演者の方々にお話し頂けた。

聴衆の方々にも新鮮な印象を感じてもらえたようだ。

異分野の話を聞くことで刺激を受けて新しい発想が生まれてくれば、研究会の運営側としても大変うれしい。

セッション終了後のバンケットも大盛り上がりで、打ち解けた雰囲気の中皆さんは議論とお酒を楽しまれていたようだった。

3日目は超弦理論的量子情報のセッションとポスター発表。

楽しみだ。