Quantum Universe

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量子論の弱値(weak value)のパイオニア達との邂逅

今日はテルアビブ大学で、相対論的場の理論における量子エネルギーテレポーテーション(QET)のセミナーをさせて頂いた。

呼んでくれた友人のベニが昨夜体調を悪くして今日は欠席というハプニングもあったが、聴衆の皆さんの反応はとても好意的で、QETの詳細もよく理解してもらえたと思う。

その聴衆の中にアハロノフさんとともに量子論における弱測定(weak measurement)と弱値(weak value)の概念を提案して発展させてきたバイドマンさんがいて、彼も熱心に話を聞いてくれていた。

セミナー後彼の部屋で、自分が長年持っていた弱値のたくさんの疑問をぶつけることができた。

そして彼とアハロノフさんの弱値の捉え方には随分と違いがあると強調された。

前ふりとしてバイドマンさん自身はバリバリの多世界解釈派であるが、アハロノフさんは彼ほどの多世界解釈の支持者ではないとのこと。

そしてバイドマンさんにとって量子論の実在は波動関数(量子状態)だけであって、弱値は波動関数のpropertyにすぎないと言われた。

一方アハロノフさんは弱値もある種の実在とするので、たくさんの共著がある二人の間でも弱値の解釈は違っている部分があるとのこと。

そして弱値を物理的実在と捉える場合の問題点を挙げた。

それが自分が考えていた問題点(http://mhotta.hatenablog.com/entry/2014/03/11/152110)と全く同じだったことには驚きを感じた。

弱値が「弱値らしさ」をもっとも発揮するはずの無限大周辺の値は、事前選択状態と事後選択状態の摂動に関して不安定であり、それを実在と思うのは問題であるというのが彼の(そして自分の)意見である。

なお議論の後で、自分が認識論的な現代的コペンハーゲン解釈やQビズムの支持者であることに変わりないとも伝えた。

しかし時間をかけて彼と実際に話をしたことで彼の考えをより理解できたことは自分にとっては大きな収穫であり、時間を割いてくれた彼に丁寧に感謝の意を表した。

自分の質問に関する議論が一通り済んで、一緒に話を聞いていた彼の若い共同研究者と二人で最近の仕事を説明しだしてくれた頃、唐突にアハロノフさんが部屋に現れた。

彼はアメリカに住んでいるのだが、今回はイスラエルの他の大学でのセミナーのために来ていたらしい。

彼とは初めて会ったのだが、ご高齢にも関わらずエネルギッシュな人であった。

彼が今やっている仕事も情熱を込めて説明してくれた。

(ただせっかくのご好意だったのに、その未発表の結果に対する彼の興奮が自分にも伝搬するには時間が足りなかったようだ。)

自分も招かれている来週の国際会議にバイドマンさんとアハロノフさんも出席するかもと言っていたので、また質問をする機会があるかもしれない。

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